鶴居村レポート(1)片野孝亮さん


鶴居村観光PRプロジェクトに参加の意思を示すまで少し時間が必要でした。

僕の実家は釧路市(※)で、鶴居村は小さい頃から両親と共に何度も訪れた場所でした。
ただその当時、そこに「旅」をするということを意識したことはなく、そこで何らか「観光」をしようという思いもなかったように思います。週末に日帰り温泉に行く、食事をする、ゴルフをする、いわゆる週末レジャーの行き先の一つでした。
つまり、知っている場所で今回のプロジェクトのテーマである「私が旅する」、「新しい旅」を本当に発見できるのかわからなくなっていたのだと思います。
(※)釧路市:鶴居村から車で30分ほどに位置する道東の中核都市

そのような状況の中、僕は一度「観光PR」や「旅」と言うテーマを塩漬けにして、鶴居村に関して興味が持てることをリストアップすることにしました。

すぐに興味が湧いたのは人に関することでした。
人口動態、産業、移住者の考え、住民同士の繋がりなど、人に関するトピックが浮かびました。
人との繋がりにフォーカスしてこのプロジェクトに参加すれば自分の中に新しい何かが生まれるかもしれないと思うようになりました。

今回の旅の鶴居村でのホストはハートンツリーの服部佐知子さん(佐知子さん)、鶴居村環境協会の服部政人さん(政人さん)夫妻。鶴居村のキーパーソンです 。
お二人のことは友人の話を通して(一方的)に知っていたのですが、鶴居村の人にフォーカスしたいと思っていた矢先だったので本当にラッキーだと思いました。
旅の半月ほど前、現地での旅の計画を話し合う東京でのワークショップに政人さんがきてくれました。
政人さんはじめ観光協会の皆さんは鶴居村での長期滞在型観光を推進しようとしています。
それに対して我々の滞在は「1泊2日」、実質30時間。「長期」のかけらもありませんが、その条件でどう楽しむかを真剣に話し合いました。政人さんのお土産の美味いチーズをつまみながら。

その場にいたのは、スタイリスト、システムエンジニアなのに旅好きが講じて起業した人、普通のシステムエンジニア(私)、バックグラウンドの違いゆえ色々な話題が飛び交う中、政人さんのナイスな提案力をお借りしてなんとかまとまっていきました。ちなみに、私は「鶴居村で生活する人たちとディスカッションする場を設けてほしい」と伝えました。図々しいかなと思ったら、なんと快諾されました。

土曜日。ウィングレットのベアドゥがかわいいエアドゥ機で雪の釧路空港に到着。
釧路空港はいつも通りまったりしていて、東京でランチをすっ飛ばして働いていた金曜日が嘘みたいでした。


▲エアドゥのベアドゥ

鶴居村には釧路空港からレンタカーで30分。東京からだと実質2時間程です。

今回の旅の拠点となったのは、佐知子さんのファームレストラン、ハートンツリー。
鶴居村の市街地から少し離れた丘の上にあり、周囲は見渡す限りの草原と牧草地。遠くに阿寒連山を望めます。
レストランの他、料理教室やハーブやアロマの教室、ゲストハウスの運営もされていて宿泊も可。
今回僕たちも宿泊させてもらいました。WWOOFのホストとしても登録しているため、高確率で外国人のWOOFERと出会えるとのことでしたが、僕たちが訪れた時はいませんでした。残念。


▲この景色まで東京から2時間である。


▲ハートンツリー店内:木の温もりが感じられる。小物や雑貨の展示も多数。

軽い打ち合わせの後、美味しいランチを頂き、(ハートンツリーのはなれ、グーテンガーデンで)鶴居村菱沼農場の「幸せ牛乳」を使ったチーズ作りを体験しました。このチーズ、夜の懇親会用なのですが、待ちきれない我々は一般的な試食の域を超えて試食しました。だって本当に美味しいから。


▲服部夫妻(左)と手作りチーズに感動する我々(右)

チーズ作り(と試食)の後は鶴居村の羊牧場へ。見慣れない我々を前にサフォークたちが後ずさりしたことに少しショックを受けましたが、羊たちは冬でも元気いっぱいで見ていて癒されました。


▲羊舎 (左)と警戒感丸出しのサフォークたち(右)

羊牧場から戻り、鶴居の方々との懇親会用に料理を作ることに。今回は鶴居を訪問した僕たちが、鶴居の人たちに料理を振舞うのです。お料理教室の先生は佐知子さん、メニューはどれも地元の食材を使って手作り。その中でも個人的に最も刺さったのが鹿肉のマリネ。このサイズの鹿肉を自らローストすることで僕のテンションが上がったことは否めませんが、新鮮な鹿肉が手に入る鶴居らしい一皿だと思いました。


▲鹿肉のマリネ作り

夜になっての懇親会。嬉しかったのは、服部夫妻の呼びかけに実に20人以上の人たちが集まってくださったことです。鶴居に移り住んだ人、これから離れる人、地域おこし協力隊の人、地域活性を研究テーマにする大学生、子供達、バックグラウンドはバラバラなのに時間を忘れて濃い話で盛り上がりました。普通の旅でこんなことってないと思います。


▲懇親会の様子

日曜日。早起きしてタンチョウツアーに。関東から移住し、鶴居村で野鳥や自然のガイドをされている音成邦仁さんに案内して頂きました。鶴居の道路ではタンチョウが優先です。


▲タンチョウツアー

鶴居村らしい朝の景色を堪能したあとハートンツリーに戻り朝食。焼きたてパンは美味しすぎてお代わりし、赤いジャガイモのスープも卵もチーズも美味しくいただきました。


▲DKdo代表も絶賛、ハートンツリーの朝食

鶴居の滞在時間も少なくなる中、政人さんと鶴居村のフットパスを散策しに出かけました。フットパスとは風景や街並みを歩きながら楽しみながら歩くことができる道のことで、その散策は歩きながら自然や風景を味わえる鶴居らしいアクティビティだと思います。ただ、僕はこのあたりから滞在が1泊2日で終わってしまうことに疑問を感じ始めます。もっとゆっくりしたいのです。


▲フットパスのガイドブックと鶴居村の風景

旅も終盤にさしかかる日曜の午後は、有名なタンチョウ写真家であり私が釧路に帰省するたびに訪れる鶴居村のホテルTAITOのオーナーである和田正宏さんに鶴居村の美味しい蕎麦屋さん「雪裡」と、近くの小川で鮭が遡上する様子を案内して頂きました。

その後、鶴居村のふるさと情報館や綺麗に整備されたプロムナードや新しいことに取り組む小学校を散策し旅の行程が終了したのです。


▲「押し出し式」の十割蕎麦(左)と鮭が遡上する小川(右)

旅のクロージングとして、今回の旅に対する率直な感想、そして旅のテーマである「私が旅する」、「新しい旅」についてディスカッションをしました。
事前に計画をした上で旅をしたという意味では一般的な旅と変わらないかもしれません。
ただ、今回僕たちが鶴居村で経験したのは一般的な旅とは次の観点で大きく異なると感じています。

まず、普段の旅では何を食べる、見る、するかを考えますが、「誰と」会うかまで考えることは無かったように思います(旅先で友人に会うというのはありますが)。
今回、鶴居村や地域の人たちとの交流が懇親会というレベルで実現できたことが僕にとっては本当に嬉しいことでした。

次に、「何もしない」という選択肢が自分の中に生まれたことです。
人々は普段それぞれのフィールドで忙しい毎日を送っています。
そんな中で忙しい毎日から離れるために赴いた旅先で僕たちは「何をするか」を考えていないでしょうか。
「何もしないことをしに行く」という旅の形があっても良いのかもしれないと思うとともに、政人さんたちが長期滞在型観光を推進する理由が少しわかった気がします。

東京から2時間で着く鶴居村。少しスローな雰囲気の中に何か洗練されたものを感じることができ、僕にとっては理想的な田舎だと感じました。どこかの宿やゲストハウスを拠点に何もしないことを楽しみに行く。何かしたくなったら地域の人に尋ねてみる。そんな旅があっても良いのではないでしょうか。僕ならそうします。

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